憧れのピアニストについて-第一弾は・・・

それはまだ私が若かりし頃?10代半ば頃かな?
ピアノ芸術など何も知らないで、がむしゃらに練習をしていた頃 ある方から、ウラディミール・ホロヴィッツの「ホロヴィッツ ショパン・アルバム」を 聴かされました。


まだ10代半ばの私は、マズルカの良さはそれほど感じず、ポロネーズやワルツを 聴き、衝撃がはしり、とても感銘を受けたことは今でもはっきりと覚えています。

その時、私はちょうど「軍隊」を弾き始めていました。 ホロヴィッツの「軍隊」のかっこいい事…それは、すごくあこがれたものでした。
花火か?大砲が打ち上げられたような低音の迫力!緩急豊かなピアニズム真似て弾いてみました。

ところが・・・まったく似ていません、それどころか・・・
うるさいだけで先生には叱られるし、親にも叱られて、どうしたら良いのか悩んでガッカリしたものでした。

それから月日は経ち、ある程度物事が判断できるようになったときホロヴィッツの奥深さ改めて認識しました。
あの、ここ一発の爆発してるかのようなフォルテは、実は以前考えていたフォルテではないことに気づきはじめていました。 「うるさくないフォルテ」ってどう出せば良いのか?

そんな時、と在るピアノショップでホロヴィッツの実際弾いていたピアノを演奏できるというこという、またとない機会がやってきました。
ホロヴィッツ曰く ”我が忠実なる、離れ難き友” と大切にしてきた1943年製のSteinway D-274モデルでワンダ・トスカニーニ(アルトゥーロ・トスカニーニの末娘)と結婚した記念に手に入れたピアノで、ホロヴィッツが1986年の日本のコンサートを含め最後の4年間のコンサートをこのピアノだけ実際に使用していたという、すごいピアノを試奏しました。

なんと、ちょっと鍵盤に触れただけで、敏感に反応し、奥深いピアニッシモが・・・
初めての体験「こんなに反応が良いSteinwayは初めて」「すごく軽く音が出る」
魔力的な中音域、どこまでも抜ける高音域、そして、少し力を入れただけでも爆発するかの低音域・・・・。
言うまでもなくホロヴィッツそのものの音がするものの???

残念ながらタッチをどう真似ようとしてもホロヴィッツにはなれなかった・・・。

そこで確信したこと、ホロヴィッツの凄さの秘密、自分なりの解釈ですが通常演奏するとき、一般的ですが、例えば、「軍隊ポロネーズ」。
仮に、1が(ピアニッシモ)~10(フォルテッシシモ)だとした場合の力の入れ方ですが最初の出だしは楽譜だとフォルテですが、7~8の指定。
ホロヴィッツの場合、力は通常とは違い4~5くらいの入りになっています。
すなわち、非常に軽いタッチで演奏しています。だから、ここ一発の10(フォルテッシシモ)がホロヴィッツは7~8くらいで絶頂へ持って行ける神業をもっています。
あわせ鑑みますと、どれだけ小さな美音のピアニッシモが出せてるかで決まってきます。

話は飛びますが、ホロヴィッツのスカルラッティを聴くとよくわかります。
ものすごく軽く、早いパッセージを弾いても一音一音しっかりと音が出ていて、中抜けしていないピアニッシモ。
そこから繰り出される、良く整った和音。そのようなスカルラッティの美しいピアニッシモの演奏。だからこそ出せる、「軍隊」の中の迫力のフォルテ。
何だか出来そうで、実はなかなかできないホロヴィッツの演奏、実は超絶技巧なのに超絶技巧に感じさせない。正確な技巧ならではの個性的な演奏。

そんなホロヴィッツの猿真似?10代半ばの怖いもの知らずは、今思えば、うわべだけ真似ようと必死に努力はしましたが、全然ダメだったことは、今でもいい思い出です。

そして今でもホロヴィッツを聴くと呆気にとられることしばしば、あの頃を思い出し、胸がキュンとしてまた「頑張るぞ~」って思えるのもいい事ですね。

補足、もちろんホロヴィッツはホロヴィッツのキャラだからいいのです。
今では私は私らしい演奏が出来るように、日々修行!!
一音聴いただけでも解ってもらえるようになりたいな~
ただし、私は奇をてらったような演奏は好きではないことを付け加えておきます。

※付録の写真がホロヴィッツ愛用の1943年製Steinway D-274モデルです。